エンジニアが初めて書籍を執筆するにあたって

新年一発目のブログは腰が重いがゆえに、いざ書き出すと長くなる悪い癖──ですが、今年も継続アウトプット頑張っていきます。よろしくお願いします!

──昨年9月に、書籍『たのしいインフラの歩き方』を発売させていただきましたが、数ヶ月が経って年も変わったので、執筆話の発生からどのような経緯があったのかなどについて、まとめてみます。一冊しか書いていないのでアレかもですが、私のように職業ライターではない、本職がエンジニアの方の初執筆や、会社内における調整などの参考にしていただければと思います。



目次

  • 執筆話の発生
  • 会社との調整
  • 執筆契約と〆切
  • 著作権
  • 印税
  • 執筆作業
  • 編集
  • 告知
  • 発売後
  • 執筆について


  • 執筆話の発生

    初動

    ブログに設置してある、問い合わせフォームからメールがきました。技術評論社の編集者と名乗る方から、ITインフラについての書籍を執筆してみませんか、という内容です。

    メールの『執筆』という文字列を見て、「うわっ…このメール、重すぎ…?」と頭をよぎりましたが、昔から情報源として特にお世話になっている『技術評論社』という名前を見て、それなら話を聞いてみようかな、ここから出せたらカッコイィだろな、と思いなおしました。ぶっちゃけ、結果的には出版社よりも担当者次第という部分が強いのですが、それでも自分の中で最も認知度の高い所から話をいただけたのは、気持ちの勢いをつけるのに幸運だったといえます。

    打ち合わせ

    そこから2度、弊社に打ち合わせにきていただき、内容・ボリューム感・完成時期・著作権・印税・執筆の基本などについてお話しました。直接の打ち合わせはこの時だけで、その後は全てメールでのやり取りだけで済んでいます。

    執筆自体は社内で上長などと、すったんだもんだ議論があった部分は後述するとして、結局、最初の連絡から半月後には執筆することを決めることができました。そして自分で考えた目次を、章・節あたりまで書き出して提出し、わりとすんなりと、それでいきましょうとなって開始しました。この時点では200~250ページ想定が、まさか600ページを超えることになるとは全く思っていませんでした……


    会社との調整

    活動の許可を得る

    ウチからの出版物というのはほぼ無いに等しく、エンジニア単独だと皆無な状況でした。そのため、活動内容や著作権・印税を中心に理解をしてもらい、頓挫しない状況を作る必要がありました。

    この辺は、前例がない状態であり、私の立場がそこそこエンジニアリングの方向性を決めて良いものであったことが幸いしました。私にとって、そして後に同様の活動をするエンジニアの人生にとって、好条件かつ会社に迷惑をかけない条件を考え、提示しました。それに対して上層部は概ね速やかに同意の上、活動が滞らないための規約などを整えてくれたので、協力的なスタンスでいてくれたと言えるでしょう。

    ただ、こういう活動を率先的に行う業務内容や文化ではないので、相談を持ちかければ 「書けばいいんじゃない」 という流れにはなるものの、大半を自力にて様々な交渉や段取りをしていくことになります。書くことだけに専念できないという反面、全体の進行をすることで得難い経験を得られる、という見方がよいのではないかと思います。

    業務と印税の兼ね合い

    副業禁止
    まず、副業は禁止という我が社ですが、執筆による印税収入は例外ということになっています(なった、かも?)。これはブログのアフィのような、個人的な趣味による収入ではなく、企業レピュテーション向上が主体である、といった理由があるからでしょう。

    その制度的な部分は問題なかったのですが、倫理的な部分などで以下の様な議論が生じました。

    個人的活動の範囲内として収めるべき
    前提として当然、自宅(深夜・休日)で多くの執筆を行いますが、おそらくそれだけでは足りないだろうことが予測できました。それゆえに、業務の合間をぬっての執筆も可能な条件にしておきたい、という希望がありました。

    それに対してまずは、業務と混同すると評価や公平性の観点から、業務時間外にのみ執筆することで、完全な業務との切り離しを提案されました。そうすることで、著作権や印税は完全に個人として処理できますし、業務は変わりなく遂行できるため、一見は最も無難な選択肢にみえるからです。

    これの問題点は、前述のとおり時間が足りないだろうという問題が残ることです。あまりダラダラと長期に書くと、内容の価値も薄れていきますし、良い選択とは言えません。

    そして、執筆内容がこれまでの業務内容を凝縮したものになるという点もあります。社名と個人名を表記し、業務経験を元に書いて企業レピュテーション向上が目的に含まれているのに、会社とは関係なく執筆しています、という体をとるのはおかしな話です。関連性を切り離せない以上、会社にとって見えない効果である企業レピュテーション向上に、どれほどの価値を感じてくれるか、がカギとなってきます。

    価値を感じないというスタンスなのであれば、自身が私的時間のみで執筆しきる覚悟をするか、諦めるかという話になります。そうではなく、価値を認めてくれるのであれば、自然と柔軟な対応に向かうわけで、今度は業務時間内の扱いについて議論が続きます。

    業務時間内の執筆は不公平である
    では、業務に支障のない程度に執筆可能ということにしましょう、となるかというと、そうでもありません。通常業務は給与査定の対象であるため、業務時間内の執筆をも査定対象とすると、通常給与と印税収入の二重収入となります。それは他の社員との公平性が保てなくなる恐れがあるのではないか、というものです。

    私としては、書いてみたいし、印税も欲しいし、ついでに会社の役に立てばいいな、というスタンスなので、公平じゃないと言われると、ある程度は認めざるを得ません。そのため、印税を直接個人の収入とするのではなく、一旦会社に入れて、インセンティブという形で出すという提案もありました。これは、会社が上前をはねたいとかいう考えからではなく、純粋にそれが無難であるだろうというものです。

    しかしながら、私としてはせっかく地獄を見て書き上げるであろう書籍の印税は、金額的にも処理的にも曇りなく直接もらいたかったという希望があります。また、退職後もそれが継続していくべきであり、著作権も同様であることが、書き手にとって必ずしもプラスにはならなくともマイナスの要因にならないと考え、著作権も印税も個人として処理することを提案し、押し切りました。

    公平性については、ジョブグレードや成果報酬インセンティブなどによって、そもそも完全な公平性など存在しない。書ける人にしか達成できない事柄なのだから、書いて得られるものは得るべきである。そしてわずかな不公平を、偉業(?)の足かせとするべきではない。という、今思えばわりと無茶な理屈を出したりもしました。

    不公平さがわずかかどうかは、印税額次第なのですが、それが品質次第とはいえ、かけた労力に対してワリに合わない、という感想になることも少なくないでしょう。が、そういう部分が頭の隅に残ったのは、私の力量と要領が悪かったからかもしれません:-)

    執筆活動は業務評価に含めない
    給与評価は基本的に成果に対して行われるため、書籍出版という実績や、もといただの執筆作業というものは、多くの会社にとって形ある成果とはいえません。極端に言えば、評価期間である半年の間に、執筆しかしていなくて発売にすら漕ぎ着けていなければ、評価はゼロになるわけです。

    仮に業務評価が、目標に対して何をどれほど達成できたのか、という堅い管理下における評価を受ける人の場合は、執筆という概念を目標設定に組み込むことは難しいでしょう。私の場合は、一応目標は立てるものの、その時その時に必要な事を自分で判断してやり切る、という裁量的なノリでやる部分も多いため、執筆活動に向いていたといえます。

    実際は他の評価指標もあるため、もう少し柔軟ではありますが、5割以上を執筆に費やしていた時期もありました。このあたりは、私自身が手がけたシステムを手のかからない品質に仕上げたり、直属の上司がエンジニアであり理解が深く、よしなに評価処理をしてくれること、チームメイトが基本のインフラ業務を遂行してくれる信頼関係など、様々な要因があって成り立っていたと思います。この場を借りてお礼申し上げる、ようなガラではございませんが。

    執筆条件まとめ

    結果的に、業務を優先しつつ空き時間を利用することはOKとなり、著作権は個人が持ち、印税も直接個人に入る、ということで着地しました。評価制度についてはグレーな部分が残りますが、グレーを許容できる文化か、もしくは制度に落とし込んでしまう組織ではないと、執筆活動は難しいかもしれません。

    私の執筆は1つの前例にはなりますが、そう多い出来事ではないため、業務状況やエンジニア自身の希望によって、都度調整していくことになりそうです。

    これらは執筆活動中や発売後に影響を与える重要な要素ですので、少なくとも決断の弊害にならず、前向きなモチベーションを損なわない条件を整えるため、納得するために十分なエネルギーを注いでよいところだと思います。


    執筆契約と〆切

    私の場合、出版社との特別な契約はありませんでした。大雑把に言えば、最後まで執筆できたならば発売しましょう、という感じで特に強制力はないということです。極端な話、どうしても業務の都合で途中で執筆を諦めます。とか、やっぱり他の出版社に鞍替えします、というのもありえなくないということです。それを聞いたから何が変わるというわけではないですが、思っていたよりも堅くない活動である、という印象によって肩の力が抜けた気はしました。

    〆切についても特になく、目標ページ数がこれくらいなら、だいたい何ヶ月後に校了して、発売して、が目安ですね、という話をした程度です。実際には当初目標よりも遥かに多く遅くなってしまいましたが、「書籍」という形態だからこそ、その傲慢が通ったといえます。

    これがWEB掲載やムック本という形態となると、ほとんどに〆切や文字数制限があるため、場合によっては超ハードになることが予想できます。執筆者の業務状況と適性、持ちネタ量もによりますが、業務と執筆の両方に〆切がある状態を避け、柔軟な進行を望むのであれば、書籍という形を選択することになるでしょう。


    著作権

    前述のとおり、今回の書籍の著作権は、私の個人名で登録しました。退職前提というわけではないですが、これで退職しても個人の成果として残ります。

    もう1つの選択として会社が持つこともあります。個人名を出しているならば、退職したら実績として残らない、というわけではないでしょうが、私が書いたけど著作権は持っていません、というのも気持ち悪い話です。会社側としても、著作権を持っていたからといって後にどうにかなるわけでもないので、無難に個人が持つほうがよいでしょう。

    ただ、これは一人で書くのか、社内の複数人で書くのか、社外も含む複数人で書くのか、で事情が変わってくるはずです。そういう場合は、よくわからないからと適当に投げないで、出版社の担当者に事例を聞いたり、法務部と相談して納得行くように決めてくとよさげです。


    印税

    印税率は少し濁した記述にしておきますが、初版は刷数の10%弱が確定で得られ、2版以降は10%程度が収入となります。1冊1,000円が1,000冊売れれば100,000円の収入ということです。

    電子書籍の場合は紙媒体よりも、かなり高い印税率となります。人によっては電子化を嫌うようですが、私は時代と印税率を見て、拒否る理由がなかったので即OKを出し、結果的に紙より数日早い電子書籍発売を試みてもらい、分厚いせいか通常より多く購入いただけているようです。

    エンジニア方面の技術書は1万部売れれば十分成功、3万部超えで著名書、という感じのようです。物理本一冊2千円が1万冊売れたら印税200万円となりまので、年収に嬉しい後押しとなりえますが、そもそも1万冊も売れるかはネタと品質次第ですし、不公平うんぬんの議論がどうでもよいほどに、執筆後は苦労の方が色濃いことが実感できるでしょう。

    確定申告

    印税収入が20万円以上になると、確定申告が必要になります。ここだけ、個人として活動すると面倒な部分です。

    国税電子申告・納税システム(e-Tax)を使って申告したらよいので、詳しくはこちら 平成27年分 確定申告特集|国税庁 です。
    私の場合は、ICカードリーダライタはAmazonで2000円以下のものを購入し、住民基本台帳カードを電子証明書として使っていましたが、引っ越しの際に、住基カードは返却して個人番号カードに切り替えてください、と言われたので、やっておこうかな、という感じです。

    口座振り込み

    実際に金銭が手元に入るのは、発売から3ヶ月後以降とかなので、発売したぜウェーイ!って盛り上がっても、何もしないと実感が湧きづらかったりします。

    なので、発売後はTwitterを監視したり、Amazonの在庫数変動やランキングを眺めて、ウフフするのが日課となります。


    執筆作業

    ここでは実際に行った執筆に関わる事柄についてまとめていきます。

    データ形式

    出版社から、こういうソフトを使って、こういう形式で提出してね、というのはありません。しいて言えば、Wordはやめてくださいね、というくらいです。時代的に、書いたものがリアルタイムにオンラインで進捗確認されるような仕組みでもあるかな、と思い込んでいましたが、そんなことはなかったです。

    私の場合は単著なので、普通にノートPCで .txt を編集していきました。使ったエディタは「Sublime Text 3」です。これを選択した理由は、
  • 目次・前節・執筆節の3列を同時表示したい
  • 1ページ○文字の目安で折り返したい
  • アウトラインにフォルダ・ファイル構造を表示したい
  • その他カスタマイズできる
  • といった具合です。

    データ構造は章・節・項のうち章をフォルダにし、節をテキストファイルにしました。他に、目次・はじめに・おわりに・プロフィールなどをトップにブチ込んで、定期的にzipをメール添付して進捗報告します。

    文字数

    1ページだいたい1000文字として、250ページで25万文字を目安に書いていくことになりました。この量はおそらく、書き手・読み手・書店の全てにおいて、分量的にも価格的にもほどよいのだと思います。

    私の場合、書くべきこと・書きたいことを目次に詰め込んでいき、文量ではなく目次に従って書き進んでしまいました。もちろん、インフラ話は多岐にわたるため必然的であったともいえますが、672ページはさすがに多すぎたと反省しております。おそらく反省を反映しても、600ページ以上にはなってしまうと思いますが、終盤はそれに薄々気づきつつも、手直しする気力が尽きていたというのが実情です。

    あまり文字数が多すぎると、脳内メモリに収まりきらず、どうしても似たような話や表現が出現し、それに気づかずに進行してしまったりもします。なので、どれだけ知見がダダ漏れしていても、きちんとポイントを絞ってボリュームに気をつけつつ進行した方がよいです。

    執筆の基本

    私は初心者ですので、最初に「執筆の基本」的な説明書をもらいました。段落頭は全角スペースを入れる、とか、素晴らしい → すばらしい のようにヒラクべき漢字群、データセンター・サーバー などの音引きを残すか省略するか、などです。

    説明書は一通り目を通しましたが、必ずしも全て守って書けているわけではありません。それでも自分の中で守ろうと意識していたのは、統一性があることと、第三者目線となって読みやすいかどうか、です。そうして誠実に進捗報告をしていれば、問題があれば序盤で指摘してもらえるのでその後は修正できますし、最終的に細かいところは編集担当者がよしなにやってくれますので、この辺は常識レベルがあれば大丈夫という印象です。

    言葉遣い

    私は。です。ます。小生とか使わず、一般的な丁寧言葉で書き、要所のジョークでたまに崩すのはOKという程度にします。

    それと、読み手は情報を仕入れるために読んでくれているので、~だと思います。という曖昧表現は極力控え、自信を持って言い切るようにします。言い切れない部分は知識・調査不足ですので、ググります。ただ、技術の選択など、時代的なものに対しては使用することがあります。

    図表

    文量にし対してこのくらい、という目安はあるものの、私の場合は読み物寄りだったので少なめにしてもらいました。図表の作成自体は、PowerPointで行い、.pptx ファイルをそのまま提出したら、あとは出版社の方がいい感じに書籍用に作成してくれました。

    図表に手間取っていると文書のためのエネルギーが失せそうだったので、一番最後に回しましたが、それで良かったと思っています。

    執筆環境

    私は近く、特に背後に人がいる時に文を書くのが苦手なので、業務時間内は離れにある葉っぱ集中スペースに移動して執筆していました。社内カフェだと、人の変化が多かったり、机や椅子の形状がむいていなかったりで、すぐやめました。

    家の場合は、保育園から子どもと帰って、遊んで、風呂に入って、歯を磨いて、寝かしつけて、体力が残っていれば執筆する感じでした。さすがに子どもと同じ部屋にいたり、動画を流していると集中できないので、そこは完全に執筆とは切り離してしまいます。

    天敵は、寝かしつけの時の寝落ちでした。部屋を暗くして一緒に横になると、どうしても眠くなるので、眼球の体操をしたり、ストレッチをしながら寝かしつけることで耐えたり耐えられなかったり、という感じです。5歳となった今では子供部屋で一人でスッと寝てくれるので、乳幼児期を過ぎてからの方が時間を作りやすいのは間違いないでしょう。

    心境の変化

    普段、仕事と会議、インフラ業務とプログラミング作業を切り替えるだけでも、結構なエネルギーを必要とするのですから、慣れない執筆と業務を切り替えるのは膨大なエネルギーを必要としました。業務は本業なので、戻るのはさして問題ないのですが、業務から執筆に戻ると最初の小一時間は全く筆が進まず、なんかただただ苦しい心境だったりもしました。

    慣れてくると、徐々に自分の中での切り替え方が上手になってくるもので、後半になるほど執筆速度が上がっていったように思います。毎日書けていたわけではないですが、一日に3000~6000文字ずつ進め、終盤はコメカミから血しぶきが出んが如く、日に一万文字以上を進めた時もありました。

    他に速さに関わる要素として、内容の得手不得手があります。私はインフラエンジニアとしては、ミドルウェア > ハードウェア > ネットワーク の順に得意なので、ネットワークの節になるとノリが悪く調査時間的にも時間がかかり、気分がドンヨリーヌでした。

    そういったことから、執筆において最も重要なことの1つが、自身でのモチベーション・コントロールだと考えます。これは人によりけりではありますが、毎日、一定以上の進捗を目指す、というよりは、一定以下のモチベーションにならないような継続を心がけるのが結果的に良さそうな気がしています。


    編集

    基本的には文書と図表を仕上げて提出したら、それ以降は出版社がほとんど進めてくれて完成となります。

    書籍タイトル

    いくつか冗談交じりでタイトルをメモっていましたが、担当者が内容を鑑みて「たのしいインフラの歩き方」と命名してくれました。同社の出版物に「たのしいバイナリの歩き方」があった、というのもありますが、私自身、執筆中の心境として、読み手に楽しくインフラに関わって欲しいな、と願いつつであったため、即OKとなりました。

    文書修正

    細かい言い回しの訂正や、技術的な意味の確認と修正指摘、注釈出しなど。これらは「あ”ー編集者がいてくれねーと、コレ無理だわー」って思えるありがたさでした。

    索引

    単語索引のページは、自分で作る選択肢もありましたが、校了後で、「もう書きたくねーっ!」ってなってたので、即答で編集側での作成をお願いしました。出来上がりを見て、アレは無理って思いました。

    デザイン

    カバーデザインや章節項ごとのデザインは、私からは特に何も言わずとも、こんなんでどうですか?って提示してくれました。運がいいのかなんなのか、形も色も好みだったので、じゃあコレでお願いします。って即答で確定しました。デザイナーの方に感謝。

    製本

    製本にも色々あるようですが、「PUR製本」で開きやすく、カバーが「WPHOエンボス 絹目」で触り心地良し。ということで、これも決めてくれて、好みな感じでした。

    価格と発行部数

    672ページだと5千円以上しそうなものですけど、税抜き3,200円(税込み3,456円)と抑えてくれました。そして、初版の発行部数は○千部でいこうと思います、と連絡をいただきました。

    これらのほとんどが、素人が口を挟む余地なく、出版のプロにお任せする感じです。とにかく、修正や報告に対して、迅速に返信するようにだけしていました。


    告知

    全てが完了したら、出版社公式サイトに書籍ページができるので、BlogやSNSで感涙モノの発売告知をします。告知直後はAmazonのITカテゴリで3位に入ったりしたので、購入していただいた皆様ありがとうございました。出版社でもサイトや配布物で紹介してくれますが、やはり自分でアピールできる場を持っているべき時代だな、という感触です。

    発売日は9/8でしたが、実は9/1から一部の書店で先行発売していました。これについては告知制限されていたわけではないのですが、別にちょっと急いで何かが変わるモノでもないので、余計な情報と判断して告知しませんでした。

    あとは、献本をしたい人がいれば伝えておくのですが、面識があって献本を受けてくれそうな同カテゴリの人──となるとあまりいなくてですね、数人に送らせていただきましたが、自分の外部イベントへの参加しなさ加減を実感した出来事でした(育児の方が大事!)。


    発売後

    出版社から十数冊いただいたので、会社に置いたり、配ったりしました。


    そして先行発売店にいって、技術書の一番前で平積みされているのを見て、ニンマリしました。息子にも、コレお父さんが書いたんだよ!って伝えたけど、フーンって反応だったので誘導して褒めてもらいました。いつか、コレを読んで、お父さんの仕事の内容を理解してもらえればいいなと、思います。


    執筆について

    書くべきか否か

    過去に「エンジニアがアウトプットすべき理由」という記事に書いたとおり、間違いなくやるべき、少なくとも前向きに検討すべきだと考えます。たとえ業務が忙しくとも、自身で機会を得たか転がり込んできたならば、書籍執筆というほぼ最上位の経験を逃す手はありません。

    おそらく、日々の努力がいつかの執筆のため、という人はあまりいないでしょうし、執筆作業が重苦しいイメージであり、またそれがそれ以上に事実であるため、前向きに検討することすら厳しいかもしれません。しかし、執筆機会の出現は、日々積み上げた努力の質と方向性が優良であったことを示す指標の1つとなりえますので、人生の節目・より高みを目指す・社会貢献・印税欲しい……など、なんでもいいので理由をつけ、時間を捻出して取り組みたいところです。

    機会を得るには

    ウチの場合、毎年の採用活動ではエンジニアをインタビュー程度で取り上げたりしていますけども、それ以外で単発もしくは定期的に取り上げることは、まずありません。

    そのため、そもそもの機会を得るには、個人ブログを中心にしたアウトプットを継続することがベターとなるでしょう。会社のエンジニアブログなど共有物で活動すると、どうしても存在感が薄まってしまうので、それだと個人ではなく組織としての機会になりそうです。どのような内容や品質に仕上げていけば執筆レベルになるかは、執筆経験のあるエンジニアのブログを眺めていけばわかると思います。

    そうして一定以上のレベルに到達した上で、私のように図らずもオファーを受ける。もしくは出版社は出版するのが仕事ですので、自分から企画を提出して採用してもらってもよいでしょう。とはいえ、執筆活動は非常に重いので、自分からいく気までは起きないけども、「あ”ー技術力あがってきたわー」「知見ダダ漏れだわー」「そろそろ本書けちゃいそうだわー」とミサワってきたならば、日々の活動をこなしつつ、その旨をポロリTweetしてみると、スカウト活動中の編集者の目に止まるかもしれません。

    書籍経験

    余談ですが、私は幼少期から漫画が好きで、これまで数万冊読んでいますが、活字だけの本は技術書と学校の教科書を除くと、覚えているだけで一冊しか読んだことがありません。小4の時の夏休み感想文のために姉から借りて読んだ、ロビンソン・クルーソーだけで、4枚ほどの挿し絵に救われた記憶があります。実家の父母には、「おまえが本を書いたなんて信じられない」と、ありがたいお言葉をいただきました。

    あとは、二十代後半の頃には、数ヶ月だけ某格ゲー雑誌の攻略記事を1キャラだけ担当していたことがあります。コマコンばかり操作していた気もしますが、一緒に活動していた古株ライターに、文書の手直しを厳しく受けたので、その時の経験はかなり役に立ったと実感しています。なんでも色々やってみるものですね。


    そんな私でも、出版社や会社やチームメイトに支えられて執筆を成し遂げられ、大きな経験を得られましたので、誠実な仕事と、継続的なアウトプットさえあれば、誰にでも機会はあるのかな、と思います。が、地獄の苦労は折り紙つきゆえ、オススメしているというわけではございませんので、あしからず。