毎度おなじみ CPU 性能検証のお時間です。
長い処理を自動化してポチった状態で見るマンガや動画は、時間を有効活用した気になれるのでオススメです。
目次
Graviton4 正式リリース
2023年11月にプレビュー版として登場した Graviton4 が、2024年7月に EC2 R8g で正式公開されました(東京はまだ)。その前の Graviton3 は C7g が出て、それから結構経ってから M7g/R7g が出た流れなので、今回は R8g が先という変則気味な匂いです。
- 新しい Graviton3 ベースの汎用 (m7g) およびメモリ最適化 (r7g) Amazon EC2 インスタンス | Amazon Web Services ブログ
- 新機能 – AWS Graviton3 プロセッサを搭載した Amazon EC2 C7g インスタンス | Amazon Web Services ブログ
ということで、もうやらなくてイィかなと思いつつも恒例の CPU 性能調査です。せっかく自動化してあるから、やればやるほど過去の自分に価値が出るじゃん、みたいなお気持ちと惰性です。
基本情報の比較
まぁ Tweet もしちゃってますし、やって損はないのでキッチリ把握していきましょうそうしましょう。Graviton3 の時は C7g が 2022/05 で、M7g/R7g が 2023/02 なので、R8g が先行という形。この世代はメモリ容量の差以外は全部同じな気がするけど、同時リリースじゃない理由ってなんかあるのかね
— 外道父 | Noko (@GedowFather) July 10, 2024
スペックのページはこの辺で
- Amazon EC2 R8g instances – AWS
- Amazon EC2 R7g instances – AWS
- Amazon EC2 R6g インスタンス – Amazon Web Services
コストはこの辺で
- オンデマンドインスタンスの料金 – Amazon EC2 (仮想サーバー) | AWS
- 管理画面 > スポットリクエスト > 料金設定履歴
まとめると、こんな感じです。
費用はオレゴンより拝借で、R6g 基準の比較です。
R6g | R7g | R8g | |
オンデマンド価格比 (large $/h) | 100.0% (0.1008) | 106.2% (0.1071) | 116.8% (0.1178) |
スポット価格比 (large $/h) | 100.0% (0.0294) | 135.7% (0.0399) | 40.1% (0.0118) |
CPU Model | Graviton 2 | Graviton 3 | Graviton 4 |
CPU 性能向上(前世代比) | → 25%UP | → 30%UP | |
最大vCPU | 64 | 64 | 192 |
最大Mem (GiB) | 512 | 512 | 1536 |
公式の説明による大きな変化点は、
Graviton 2 → 3 の時は、性能25%UP で費用6%UP、Network/EBS 帯域幅が向上、
Graviton 3 → 4 では、性能30%UP で費用10%UP、最大スペックが3倍、
に加えて、細かいところでも色々少しずつ向上しているという感じです。
特にスペック3倍は、データベース用途におけるスケールアップが強力で、一時的な緊急負荷対策としても強いし、クラスタデータを3分割するくらいなら1クラスタで分割なしで貫けばいいじゃない、など安定と選択の幅が広がるのは間違いないでしょう。
ベンチマーク
それでは、疑り深い外道父さんによる、いつもの Phoronix による検証です。今回は R系 という点と、あまり古いのと混ぜると共通成功テスト数が減ってしまうことから、R6g, R7g, R8g での比較としています。C7i 以前なども知りたければ AWS CPU C7i の性能検証 を参考にしてください。
公式の文言的にはこんな感じですが、果たして結果はいかに?
……ってことで、早速ザックリとした結果はこちらになります。
こまかい結果を眺めたければ公開用スプレッドシートをどうぞ。
ついでに、cpuinfo も貼っておきます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 |
$ cat /proc/cpuinfo processor : 0 BogoMIPS : 2000.00 Features : fp asimd evtstrm aes pmull sha1 sha2 crc32 atomics fphp asimdhp cpuid asimdrdm jscvt fcma lrcpc dcpop sha3 asimddp sha512 sve asimdfhm dit uscat ilrcpc flagm ssbs sb paca pacg dcpodp sve2 sveaes svepmull svebitperm svesha3 flagm2 frint svei8mm svebf16 i8mm bf16 dgh rng bti CPU implementer : 0x41 CPU architecture: 8 CPU variant : 0x0 CPU part : 0xd4f CPU revision : 1 |
検証結果
R7g → R8g の平均的な CPU 性能比較としては、およそ 19% の向上 という結果になりました。Graviton3 のほぼ完全上位互換と言ってよさげなものの、テスト内容の偏りなのか公式宣言には届かずです。用途を限れば想定通りに差が出る可能性は含みますので、そこは処理内容ごとにやってみないとわからないところです。
コストは R7g → R8g で 10%UP なので、パフォーマンスが30%UP ならコスパとしては 17%UP、
パフォーマンスが 19%UP ならコスパは 7%UP といったところで、
処理時間が短縮されることも考慮すれば、使っているのが R7g かつ SavingsPlans ならガンガン R8g に入れ替えていってよい内容ですね。C7g/M7g とはさすがに価格差があるので、C8g/M8g が出るまで待機です。
数値的には少し物足りない気分ですが(贅沢?)、良く言えばいままでで最も安定感のある数値変化な印象です。
それとスポット価格がリリース直後とはいえ異常に安く、オンデマンドの 1/10 程度となっています。時期によって全然変動するのでアレですが、初期値としてもこんな割引率が過去にあったかな、というところも注目したいところです。
雑談
ここ最近、ECS の優良な更新が多くされていたり、- AWS CodeBuild が、AWS Graviton3 を使用した Arm ベースのワークロードのサポートを開始 – AWS
- Amazon ECS now enforces software version consistency for containerized applications – AWS
- Amazon ECS now provides enhanced stopped task error messages for easier troubleshooting – AWS
ECS タスクのエラーメッセージといい、デプロイに対するイメージタグの扱いといい、強めの更新が立て続けに行われるってこたー、Fargate バージョンが更新されて Graviton3 が使えるようになったりするんか?(願望
— 外道父 | Noko (@GedowFather) July 12, 2024
今回の Graviton4 も十分なコスパUPに加えて、スポット価格がいつもより抑えられていることなどから、AWS が本気出しつつあるんか?という匂いです。
今までの AWS Spot 価格は 1/3 前後だったはずで、それが 1/10 ですよと。実は Azure の Spot 価格も 1/10 なんですよね。
5か月前でシェア率 AWS 31% Azure 26% でしょー。数年前はこれがひっくり返るなんて思いもしなかっただけに、逆転するかどうかは天下分け目だし、ゴリゴリ強めの更新でテコ入れされてもおかしくはないよね
— 外道父 | Noko (@GedowFather) July 12, 2024
まぁ仮にシェア率が逆転しても、こうやってコツコツとした向上や、不満点の改善が継続されて、適切な価格で提供されている限りは AWS が一番手の選択肢なのはなかなか変わらない気はしますが──
1位と2位ってマジ天地だから、どうなることやらって思いつつも、
我々ユーザーとしては、どこの環境でもやっていけるよう設計と準備をするし、応援しつつもコスト削減はちゃんとやるし、オイシイ更新がされたら食いついていくだけなんで、
Graviton4 の素早い展開とか、Graviton3 のオサガリ化などに期待しながら、日々楽しくお得に運用させていただきたく存じます:-)