都内における中学受験の感想戦

世間では長く語られる賛否両論の中学受験ですが、せっかく取り組んだので感想を述べておきたいと思います。

自分が都内だからタイトルに含めたけど、どこであろうと小学生が受験するにあたって多少は誰かの参考になればいいなというお気持ちです。



中学受験の印象

受験の時期になるたび、このような記事を見かけます。

中学受験にネガティブな印象を持つ理由としては、全員に義務教育というベースがある中で、それを軽視する行為、資金力による格差の拡大、まだ判断力の低い小学生に半ば強いることになる進路、偏差値至上主義、といったあたりから様々あります。

ウチはそこまでガチンコではないにせよ、中学受験に取り組みましょうと決めた時点で、最近の受験事情から具体的な過去問まで調べてみたところ、やはり最初はネガティブな印象を持ちました(※私は田舎出身)。

世間によくある感想と似た印象もありましたが、それよりも問題の難易度について、パッと見で、コレを小学生が解けるようになる必要があるのか、という感想が最も強かったです。そして同時に、我が子がコレを小6の3学期開始時までに解けるようになるのだろうか、という不安もありました。

出題されている以上は対策の時間が足りれば解けるようになるのだろうと思いつつも、よほど要領が良い子でない限りは苦労の沼に入り込むことは必至であることがすぐにわかりました。偏差値帯でだいぶ難易度は変わりますが、上位層の問題は受験経験のある大人でも、準備不足ではとても戦える内容ではないと考えてよいです。

もし親として受験挑戦を考える場合、偏差値や華やかな紹介資料だけで志望校を決めて、塾と子に押し付けるのではなく、募集要項や過去問にしっかり目を通しつつ、目標地点を認識して共に進行していくのが最低限の筋かなと思いました。

どのくらいの努力をさせることになるのか、子がどれほど努力し続けているのか、を認識しているかどうかで、ほぼ必ず生じる進行中の親子の軋轢において、その衝突度やモチベーション管理に大きく影響すると思われます。

全てが終わって、親子で感想戦をしてみたところ、お互いに取り組んで良かったと感じることができた一方で、もうやりたくねーなと思ったのも本心です。


最大のメリット

中学受験をするメリットには例えば、
  • 高校受験なしに中高一貫で6年間を通して取り組める
  • 早々に希望する学力や学歴を伸ばす環境に入れる
  • 先々の就職や夢を叶える幅が広がる
など色々と考えられます。

これらは入学後に得られる確かなメリットではありますが、私が側で進行を見ていて最も強く感じたメリットはシンプルに『賢くなる』ことでした。

これはテストの点数を取れるようになるとか、偏差値が高くなる、ということではありません。日々の生活から学習に至るまで多くの場面において、情報に触れたり行動をする際に、漠然と右から左に流すのでなく、疑問を抱いたり、より良い方法を模索したり、といったことを深く考えられるようになる、ということです。

何も取り組まない状態と比べると、日常会話、選択する本、興味対象、のレベルがゴリゴリ上がっていくことを実感できます。この考察力やらが小6時点で身につくということは極端に言えば、中3で身につく人とは3年間、高3で身につく人とは6年間、日々の成長度合いに差が開き続けることになるわけです。

人は何歳になっても成長できる、という綺麗事は世の中にあり、事実でもありますが、より幼い年令で身につけて継続した行動・能力のほうが、圧倒的なパワーがあるのもまた事実であります。

成長は早いほうがお得である、という考え方になりますが、これは次のデメリットの1つと相反するところに中学受験の進行の難しさを考えるところになります。


デメリットの双璧

デメリットには圧倒的な点が2つあります。

高額な費用

1つは費用の問題です。目標や開始年齢によって異なりますが、大雑把には 100~200万円以上 が総費用として吹っ飛びます。ほとんどが塾代なのですが、塾ナシに家庭だけで取り組むというのは限りなく不可能に近いです。

目標の調整や学習スケジュールはさすがプロという内容ということもありますが、親以外の大人の存在や、友達やライバルとなりうる存在は子どもにとってかなり重要で、学習環境でありつつも同時に親から開放される時間ともなり、その効果は値段に見合うとも言えそうです。

ただ今のご時世の問題として、少子高齢化の中で2人3人と子どもを産む家庭は間違いなくエライわけですが、子が多いほど中学受験に取り組む費用の捻出が厳しくなる、ほどの相場価格であるということです。

1人あたり受験対策に200万円、私立6年間で500万円以上(都立なら200万円くらい)となると、中堅クラス以下の世帯収入だと結構シビアに何人まで対応できるか考えるラインになるでしょう。

しかもこれは最上位クラスの学校を狙った場合に限るという話ではなく、中堅クラスから費用と時間をケチって受かるような甘い情勢ではないところに、過熱を通り越して狂気を感じられます。

強制の堺

もう1つは子どもに強制的に無理を強いるという点です。

当然ですが子どもは若いほどに、意思決定力が弱く、知識も経験も浅いので、どの学校に行きたいとか、何を目標にしたい、という意思表明は限りなく少なくなります。

高校生の大学受験なら?中学生の高校受験なら?ある程度からほぼ全てを自身の意思で志望校を決め、自身の意思で学習に取り組むことが可能です。

園児の小学受験なら?これはもう子の意志はゼロで、100%親の意向によるものと言って間違いないでしょう。

では小学生の中学受験なら?大半は自身の意志で意図を持って学校を選択するということはないでしょう。そのため、少しでもモチベーションを上げたり、自身で選択した感を出すために、学園祭や制服を見せたり、目標に届いていない悔しさをバネにするわけですが、実際は受験なんてしたくないのが本音なわけですよ、勉強したくないとか以前に行く意味がわからないのですから。

だからハイレベル帯になると、そういうのはスッ飛ばして、ガリ勉するのが当たり前であるように洗脳に近い環境にするわけです。でも良識ある親だったらそんな境遇にしたくないわけで、子どもにとって無理ない範囲の努力で入れれば十分となるわけですが── じゃあ無理ない範囲ってどの範囲なのか。目標を甘く下げれば下げたところまでしか伸びないし、高めに設定すれば慣れるまではツライ勉強を強いられることに変わりなく。

成長するには多少の無理は必要で、でも強制しすぎないってのは小学生にはかなり難しい話なんですよね。だから幼少期から受験対策の開始時までの下地とか、そもそも試験に向いた性格かどうかとか、得意分野は何か、といった様々な点を総合的にバランスとって、時間と限界値を探りながら調整してあげるくらいしかできません。

ただ普通の親は教育すること自体に明るいことはそう多くなく、仮に明るくとも最初から最後までハッピーな雰囲気で進行して合格しました、なんてことが確定するわけでも全くなく、経過にも結果にも不安だらけってのが超嫌なところです中学受験。


『過熱』の行き着く先は

私も二人三脚で受験勉強に取り組んできたので過去問を追って見ましたが、10年分とかを過去から現在まで追ってみると、あからさまに問題の難易度が難化されているんですよね。これが学校と塾のイタチゴッコの結果なのか、少子化による入学者の低レベル化を防ぐためなのか、わかりませんがまぁなかなか難しいです。

国語は文章が高度だし、算数は知らないと解けないクイズだし、適性検査も要求する能力が高い。そしてどのテストも、時間内に最後まで到達すること自体がまず厳しい。合格点が高得点帯なのか低得点帯なのかで、だいぶ難易度が違いますが、低得点帯のテストは各大問の最後の難易度が捨てゲー地獄だったりします。

都立系は体裁上は小学校で習うレベルの知識で解けますよって謳ってますが、全然無理無理カタツムリですよ、ガチンコの対策ナシに勝てる問題じゃナッシングです。ですが、ビジネス的視点ならば適性検査の方が活きる学習内容である、というのは間違いないので嫌いではないです。


この徐々に高度化する試験が示すところは、すなわち『時間と金をかけてこい』ということで、その気概があるのかを親子に問うているわけですが、ここ10年20年で小学生という時期の生き物の脳みそが見違えるほど進化発達したかというと、そんなコトあるわけもなく、そうなると対策としては知育・幼児教育から始まり、受験対策の開始時期を早めていくとか、毎週の学習時間を多くしていく、とかにシワ寄せが行くわけで全くもって健全じゃないでございます。

現在の難易度でいえば、完全な私見ですが中の下 ~ 上の下 あたりが「これくらいでイィんだよ」と思える、健全な小学生が挑戦に適する内容だと感じました(※偏差値だとデータによって異なるので上中下)。

とはいえ最上位クラスに合格する小学生もいるわけで、それはそれでマジで凄ぇなと思う一方で、その中でどれくらいの割合が健全な人格とバランスを保てたんだろうと想像しつつ、人間の幸せの定義について見つめ直してみたくもなる中学受験の業よ。


東京の特徴

東京に限らない話かもですが……受けるにせよ受けないにせよ、地域の特徴を捉えておくってのは考える上で役に立つので、自分なりに調べつつも、ガツンと塾の先生に面談で聞くのがオススメです。

選択肢が多い

人口密度が高いため、近~中距離まで視野に入れれば、かなり学校の選択肢が多いです。

都立/私立系から始まり、英語に強い、部活が強い、理系に強い、公立にはない取り組み等々、子どもの興味関心に合った選択をしやすい環境と言えます。

また、数年間の受験勉強期間において、学力や興味関心が移り変わることに対して、柔軟に志望校を調整できる余地があるとも言え、これらは東京ならではの強いメリットであると断言できるところです。

通学が便利

交通網が豊富なことで、乗り換えや通学時間を少なくできる可能性が高いです。

小学生より前の時点で中学受験を考えるのは厳しい話ですが、電車やバス1本で行けるように住居を考えたり、なんなら合格後に引っ越すことも視野に入れると、より柔軟な選択と調整ができて良いです。

これが田舎だと乗り換え2,3回で片道1時間以上とか、寮に入るとかもあるので、事情が全然違うわけですが、東京は東京で幼稚園児が1人で通常のバスを乗り降りしてたりするので、なんにせよ近いに越したことはない!の精神でいきたいところです。

倍率が高い

学校の数が多くて、少子化なのに、なんなのってくらい受験倍率が高いです。

学校と日程によって全然異なりますが、多くは3~5倍、高いところは8倍以上になります。ぶっちゃけ倍率が高くなると、小学生の不安定さを加味すると、どれだけ事前評価が良くても落ちる可能性が高いので、初日を筆頭に受験スケジュールの調整がもの凄く重要になります。

男子校(女子校)が多い

中堅クラス以上の学校はなぜか男子校が多いです。

最近の新しい学校は共学が多く、共学に切り替える学校もあるので、異性がいないほうが~という概念は古くなりつつあるのでしょうが、それでも共学のみを志望しようとなると一気に選択肢が減ります。

男子校の方が真のトップ層のレベルが高くなるとか、共学の方がその後の結婚率がどうのとか、そういうデータもあるみたいですが、私としては共学一択なので調整にやや影響するところでした。

お試し受験

日程の都合上、1月に埼玉や千葉で先行して受験を試す機会があります。

メイン志望の方には失礼な話ですが、お試し受験をした方が良いか悪いかだけで言えば、した方が親子ともに準備ができてよいです。

これも受験費用という種銭の話にも関わりますが、関東圏で複数の学校を構える系列グループ学校ならば、受験費用を複数一律にできたりするので、調整次第でお金の面は問題なくできます。


綺麗事かもしれませんが、一定以上の努力を重ねて入った学校ならば、入った学校が何処かよりも、入ってからの6年間をどう過ごすかの方が大切だと私は考えます。

中学受験=難関校を目指すみたいなイメージもありますが、重要なのは入学後の先を見据えた内容であって、高偏差値帯に入ることそのものを目的としてしまうと、それが幸福に繋がるかというと多くは微妙になる気がしています。

中高一貫校に入る・入ろうとすること自体にはメリットは多くあるのですが、問題はそのメリットを享受するためには、過熱した中学受験の渦に飛び込まなくてはいけない、ということです。

見定めた受験校が、通いやすい距離だし、偏差値帯も努力に値するけど高すぎず、って思って気持ちに余裕を持って取り組んでみたら、全然大変でギリセーフでした!みたいなのも普通にありえるわけです。受験スケジュールを一歩間違えれば全日程・全落ちでした、みたいのもわりと普通に起きうる事象だと思います。

数年間かけて、本番4日間でいざ勝負!みたいな仕組みを、成長中で不安定な小学生で実施するには、あまりに金銭的にも精神的にも負担が大きい、という感想です。

過熱を抑えるために何かしら負担が少なくなる仕組みができればと思うわけですが、いかんせん成長には時間と費用が絶対的に強いのが事実であり、試験という制度である以上は対策に価値が生まれるわけで、、

日暮れまでポコペンやってた自分の時代とは違うんだなぁとしみじみ現実逃避してオチなしにしてしまう有様でございます;-)