エンジニアたるもの技術書に目を通すことはしばしばあるわけですが、最近は良書っぽいモノを見つけた時は、自分で読みたいという思いより、社内のエンジニア達に薦めて読んでほしいと思う方が強い時があります。
そうなると電子書籍を扱うことに考えがいきますが、サービスごとに規約が異なったりグレーな部分が多かったため、複数人が集まる法人として購入した場合はどのように扱うことが明確にセーフであり、かつ効率的なのか知る必要がありました。そこで、各サービスが法人の利用規約をどのように定めているのか調べてみることにしました。
最初に
調査に至る経緯
私が、法人における電子書籍の扱いについて不明確なことについてブツクサ発言していたら、法務の人が気にかけてくれて、わざわざ各サービスに問い合わせしてくれました。対象のサービスは、会話の中で数人のエンジニアがピックアップしたものが中心になっています。海外にも同様に問い合わせてくれ、せっかく溜まった情報なのでまとめておくことにしました。調査した時期
2012年10月後半に問い合わせしたものがほとんどで、今回のまとめにあたって再調査は行なっていません。そのため、現在は規約の変更が行われている可能性もあるため、下記内容は参考程度にお願いします。私の電子書籍の知識
ファイルの複製はしちゃダメよ、などの一般常識は当然ありますが、熱く語れるような知識は持ちあわせていません。なので、調べた事実を淡々と記載したいと思います。情報の多少の過不足はご容赦くださいませ。ID共有について
サービス利用において必須のアカウントIDを、複数人で利用(ログイン)してよいかどうか、です。サービスによって、ファイルを直接ダウンロードするものや、ビューワーで見るものなどがあり、それぞれ性質は異なりますが、ここでは、対象のサービスが許可しているかどうかでOK/NGをつけています。下記・法人利用についても同様ですが、いわゆるグレーな条件と判断した場合は、ブラックとして扱うことにしています。
法人利用について
法人用の契約を公開しているサービスもありますが、多くは法人の購入について明確に記載していません。よって、そもそも法人が購入して良いのかどうか、法人が利用する手段はあるのか、といった点でOK/NGをつけています。コメントについて
基本は問い合わせの回答の要約としていますが、一部は契約ページを参考にもしています。また、文章についてはサポートからの回答のコピペではなく、まとめ用に編集しています。それでは、以下、法人利用規約のまとめになります。
国内
サイト名 | ID共有 : OK | 法人利用 : NG |
規約内容/問い合わせ回答などの要点 |
O’Reilly Japan | ID共有 : NG | 法人利用 : NG |
利用規約の登録情報の項で法人利用禁止されています。 本サービスの利用はユーザー本人によるものとし、法人・組織による登録は認められません。 |
紀伊国屋 | ID共有 : NG | 法人利用 : NG |
出版社の意向により、個人での利用に限られています。 |
紀伊国屋 法人用 | ID共有 : OK | 法人利用 : OK |
基本料金で1接続・追加料金50%追加で同時3接続に変更可能です。 |
電子書店パピレス | ID共有 : NG | 法人利用 : OK |
法人利用OK。アカウント共有については直接の回答はなく、 著作権についての注意を守ってください、とのことでした。 |
Booklive | ID共有 : NG | 法人利用 : OK |
個人用サービスなので共有不可です。校費や社費等などで購入可能ですが、 作品を閲覧するためには、利用するお客様1人1人に登録が必要です。 |
BooksV | ID共有 : NG | 法人利用 : NG |
規約上、法人利用は認められていません。 また、規約には「利用登録は利用する本人が行い代理人は認めない」 とされており、登録したご本人様以外の利用は認められていません。 現在、案内できる回避方法もありません、とのことです。 |
honto | ID共有 : OK | 法人利用 : OK |
hontoビューアアプリは、1つのアカウントにつき3台まで閲覧端末を登録することが可能です。 登録端末を複数人で利用、閲覧することは規約違反にはなりません。 |
達人出版会 | ID共有 : NG | 法人利用 : OK |
法人購入が可能です(ソフトウェアライセンス数に似た形)。 個人利用とは全く別の契約・購入方法になります。 (回答より) 弊社としては販売書籍のジャンル上、法人での需要が少なくないと考えており、また 法人に所属されているITエンジニアの方々にも業務に役立ててほしい と考えております。 その一方で、弊社では原則として個人購入が前提の サービスのため、複数人の従業員で読まれるのは問題になります。また、法人といってもその規模も異なるため、執筆いただいた著者の方には適切な利益を還元したい、という考えもあります。 そこで、通常の個人購入とは別に、法人内の複数人の方が読まれる前提で 法人購入される場合、ソフトウェア等のライセンス数の考え方に似た形で ご利用いただく想定をしております。お問い合わせフォームや、こちらのメールへの返信にて、購入される 法人名と、希望されるタイトルと部数(何人で読まれるか)をお知らせください。その場合、通常のメールアドレスによる署名の代わりに、会社名と 部数(XX Copies)を署名としてPDFの各ページに挿入したファイルを メールにてお送りいたします(EPUB版の場合、メタデータのタイトル欄に 同様の文字列が入ります)。 なお、この場合のお支払いは銀行振込を想定しております。ご購入希望タイトルと部数をいただければ、合計金額と 振込先口座をご連絡しますので、振込後、書籍を発行する形となります。 |
海外
O’Reilly | ID共有 : NG | 法人利用 : OK |
アカウント共有NG。法人購入は別途連絡で可能です。 If you’d like to have the eBook available to your colleagues, so that they can all view a copy, you can purchase a site license for multiple copies of the title. For that, you’d have to contact our Corporate Sales team, under Leslie Crandell. |
Manning | ID共有 : NG | 法人利用 : NG |
1端末で回覧する程度ならOKです、とのこと。 I am sorry but sharing an ebook is against our copyright policy. The only way an ebook maybe shared is if it is on a single computer terminal in an uncopyable format. |
Pragmatic Bookshelf | ID共有 : NG | 法人利用 : OK |
マルチプルライセンスは有り。 (参考リンク) You can buy multiple licenses of an eBook title for your team or organization, in which case the eBook will be stamped with the number of allowed licenses. We’ll only send you one, so as to conserve everyone’s bandwidth. |
Safari Books Online | ID共有 : NG | 法人利用 : OK |
規約ではfor your personal use onlyとなっていますが、 それとは別にBusiness Useの Safari Books Online for Organizations があります。 |
Amazon kindle | ID共有 : ? | 法人利用 : ? |
コピペみたいな長文がきて回答になってないようです。 (コンテンツはコピーできないとか、通常6台までデバイスを持てる、など) |
まとめ
要点
感想
電子書籍vs紙媒体のメリット・デメリットはググったらいっぱい出てくるので細かくはいいとして、会社で本を扱う時に面倒なのは、どの部署が何を何冊買っていて、今どこにあるのかわかりづらいことです。さらに個人でもいっぱい購入してるし。利用者としては別にファイルコピーしてバラまきたいわけではなく、払うものは払って、紙媒体より便利に利用したいだけなので、調べた中での仕組みで有効そうなのは、
売る側としてはガードを固める方向から入るのは当然ですが、もう少し仕組みが整備されて、購入費用と利用効率のバランスがとれると、会社のお金でもっと購入するようになってお互い幸せになれそうな気がします。
とかここまで書いたわりには、もう何年もまともに本から学んでいない自分がいるので、
ネットを徘徊するかのごとく、本も(会社のお金で)サクサク読めたらいいなと思います。