子どもの夏休みに在宅勤務してみた

以前、IT企業の勤務時間帯と子育てについて という記事にて、勤務時間を早くしてみて絶賛継続中になりますが、今回は子どもの夏休みに取り組んでみた施策について、少し長くなりますが振り返ってみます。

自宅での作業は今までいくらでもしてきましたが、明示的な在宅勤務は初めてであり、会社としても大々的に推奨しているような仕組みというわけではない、といった状況での試み的な感じです。



試みを考え始めた理由

常日頃から学童を利用している一般的な小学生の夏休みは、通常、朝~夕方まで学童で過ごし、お昼ごはんはお弁当を持参することになります。なので、普通に過ごすならば、朝お弁当を作って持たせるだけで特に不自由なく親子ともに生活することは可能です。

コレに対して、私の教育的観点から、言い方は悪いですが、夏休みにこどもを学童に閉じ込めることによる成長の機会損失が嫌だと考えました。学童の場合、友達や本などと、朝4時間過ごして、お弁当を食べて、また5時間過ごして終わり、というなんとも変化の乏しいものになります。ウチの学童は良いところですし、友達と遊ぶというのは大切ですが、もう少し自由度を与えてあげたいなという想いがありました。

基本的には自立を強く促す教育方針なのですが、まだ小1なので、在宅にて最低限の補助をしてあげることによって、友達の家と行き来したり(※後述有り)、学習や自由研究を進めたり、運動能力の推進を計ったり、などを適切・効率的にできるだろうことが狙いになります。

環境によって異なることなので賛否はあるでしょうが、体感や周囲の観察などから、子どもの成長度合いの影響は、ほぼ全てが親にかかっているといっても過言ではないと思います。それは私の場合、ガッチガチの進学レールに乗せるということではなく、はたまた自由と放置を履き違えるということでもなく、正しく効果的な考え方や生き方を教え・導いてあげることを指しています。それをより促すために、学童で生活を閉じるよりも、在宅してあげたほうが、より確実に実現できるという自信があったということもあります。


実現するための選択肢

では、現状を踏まえてどうすべきか、どうしたいかというのを考えてみました。ザッと考えたのが、

 1.会社に毎日つれてくる
 2.長期休みの期間だけ在宅勤務にする
 3.長期休みの期間を全て有給休暇+欠勤にする
 4.長期休みの期間を休職扱いに類似したものにする
 5.実家にホームステイさせる

さて、どうなるか。

1.会社に毎日つれてくる

たまに会社に連れていくと結構喜んでくれるのですが……
毎日となると、席の確保とか、お昼ごはんとか、色々あるけども、まぁそれらがなんとかなったとしても、宿題と読書とゲームくらいしかやることなくて、あまり目的に合っていません。で却下。

2.長期休みの期間だけ在宅勤務にする

許可が出るならば、これが一番の理想と思われます。一緒にお昼ごはんを食べ、子どもの生活行動範囲に居てあげることができます。

ただ、自分自身、在宅で通常通りのパフォーマンスを出せるかどうかは、自信が完全にあるわけではなかったです。やってみないとわかんないし、でもやれば気持ちをコントロールして、適切にできるようになるとは思いましたし、出退勤の往復やトイレ難民、電話対応といった時間の分、有意義になる可能性は十分にありました。

3.長期休みの期間を全て有給休暇+欠勤にする

これは現在の制度上に則った対処ということになります。有給を使い切り、かつ足りなければ給与カットになっても自宅にいるというもの。

しかしこの方法は、あまり効率的ではありません。私は別に、有給をとって家にいるからといって、仕事をしたくないわけではないため、普通にリモートでできる業務をやることになるだろうからです。無理やり、1ヶ月も何もしないというのも、誰も得しないでしょう。

4.長期休みの期間を休職扱いに類似したものにする

上記3番と似た感じですが、年に1ヶ月間を2回、完全に給料がゼロになってもいいので、希望を押し通すためには致し方なし、という方針です。これも、同じく誰も得しないでしょう。

5.実家にホームステイさせる

1週間ならまだしも、1ヶ月はちょっと違うかな、というのと、友達と遊ばせたり、成長を促すという目的から離れるのでダメです。しかも、普段近くにいない孫に対して厳しく適切な生活を促してもらうというのは、無理があります。甘やかし放題確定です。

それよりも、従業員毎にコレが可能かどうか異なるので選択肢としては微妙です。社内で後続が出てきやすい選択でなくては意味が薄れます。


高学年なら、弁当を作っておいたり、材料や費用だけ用意して自炊させて、自由に過ごしていいよ、くらいには持っていきたいところですが、低・中学年の3~4年間は、多少何かを犠牲にしてでも取り組む価値があると考え、わりと無茶な案まで及んだわけです。

……でまぁ少々考えた結果、圧倒的に夏休み限定の一時的在宅勤務がベストと判断するに至ります。そして、息子にどうしたいかも相談し、同様の結論に至りました。


会社の方針と在宅勤務実行へ

こういった悩み的なものを、年明けくらいから打ち明けていきました。半年以上の猶予があれば、なにかしら形になりやすいだろうという目論見と、

ちょうど会社から、勤務形態の多様性を促していきたいという方針が打ち出されたタイミングだったからです。多様性とは、単に常時在宅勤務を増やしたり、一定の固定条件下ということでもなく、個別に柔軟に対応していきたいという、ふんわりした意志を感じ取りました。じゃあ自分からガツンと希望を出したほうが、会社としても事例を増やせるしWin-Winでしょ的な強気姿勢でGoシュートするわけです。

この時点では通る可能性のほうが低いかなーと思っていましたが、自分の上司が似たような家庭環境ということもあり理解を得られ、申請的なものをゴリゴリ通していってくれ、特にすったもんだなく夏休み限定在宅勤務を実現する運びになりました。

環境条件

作業環境としては、ちょっとした認証VPNを通して社内システムに接続できるようにもしましたが、最近は多くがSaaSだったりするので、そこまでシステム利用に困ることはありませんでした。

業務内容は、今月は研究や検証がメインだったので、それほど人と会う必要もなく、というか普段から社内チャットメインなので、普段よりも即レスするように心がけたくらいで特に不自由はなかったです。

あとは週1のチームミーティングのために数時間だけ出勤するのと、ちょうど真ん中の2週間後にフィードバックすること、という程度の条件はありましたが、チームミーティングはお昼ごはんを一緒に食べ終わってから4時間くらい留守番してもらうだけにすることで、学童ゼロに持っていきました。

また、そのうち1回は近しい同僚の子どもが集まる日だったので、6時間ほど会社で一緒に過ごしたこともあります。その時は、勉強と読書とゲームをやっててもらい、昼休みには初見のお姉さんと一緒にスプラトゥーンをプレイしてもらい、それを機に上達し、最近ウデマエB- まで昇格して喜び狂ってました。ゲームは知らん人とやってナンボですね。


取り組んだ結果

目的は達成できた

子どもの宿題や勉強、自由研究のフォローは滞りなくできました。提出物は最初一週間で完成しましたし、工作した木製スマートボール+作業内容テキストは、クラスで好評だったようで喜んでいました。日課としている勉強は既に、二年生後半を終えようとしているので、難しめの部分はわかりやすく解説する必要があり、自宅ならではのフォローだったと思います。

また、子どもに何も予定がない日は30分ほど早めに仕事を切り上げ、プールに行って一緒に 25M×10往復+遊び をしました。日頃の運動不足と通勤分の運動量減を補い、息子の体力増強もできて良いこと尽くめです。

こういった取り組みに割く時間は、私の通勤往復時間・約80分を節約できた分を割り当てた体をとり、作業時間は集中して濃密にすることで心の中でバランスをとってやりくりしました。

作業効率は悪い

しかしながら、所詮は小学1年生なので、平日の今の時間はお仕事だからあまり話しかけないでね、と言っておいてもお喋り好きなのでちょいちょい割り込んできます。

スプラトゥーンでランクが上がっただの、新しいブキの解説をしてくるだの、漫画で爆笑してコレ見てだの。工作中は指示だけ出して実作業はほぼ全てやらせたのですが、釘を50本打ち続けてる間は、ガンガン響くわ、指打って断末魔あげるわ、集中とは程遠い状態が続きます。

それらは想定内ではあるものの、会社での作業効率と比べると、どう頑張っても5~7割程度しかパフォーマンスが出ないかな、という体感でした。

在宅勤務の良いところ悪いところ

子ども抜きにして考えても、結構いろいろな変化がありました。

良いところ
会社における、通勤時間・トイレ難民・自分に無関係な電話対応・周囲の会話・打ち合わせの類、などが無いことです。

自宅では、My冷蔵庫が近い・スーパーが近い・休憩時にベッドに転がったり柔軟体操できる、など。合間に洗濯したり、荷物受け取りしたりもできます。

悪いところ
週一で通っている会社近くのインドカレーを断つハメになったことです。

それと、おそらくNEETや無職の 0.1% にも満たないであろう、焦燥感や社会との隔絶みたいな感覚を味わえます。出産前後の女性の気持ちがほんの少しだけわかったかもしれません。また、誰にも見られていないがゆえに時間にルーズにならないよう、朝の着席時には必ずチームチャットに「おはヨーグルト」と書き込む習慣をつけました。

カメラ常設とかまでは気持ち悪くてやりたくないので、自宅ならではのモチベーション調整は個々人に合わせたものを開始時に考えてみるとよいでしょう。

友達とは平日に遊ばない

観測範囲での話ではありますが、今の子どもたちは、学校が終わってから友達の家に集まったり、夏休みに遊んだりということが少ないように思います。私は5~6歳になった頃から、一人で自転車で友達の家に遊びに行っていたので、今回、息子にも自由に行かせたいという目的が大きかったはずなのですが、コレに関しては何もなく終わりました。だからといって、在宅して良かった感に変わりはないのですが。

おそらく、学童に行く割合が多くなったり、習い事をしていたり、家に固定電話がない、核家族&共働きが多く家に誰もいない、お受験校だと近所に友達がいない、といったことが要因なのかな、と考えています。私としては、ガンガン行き来してマルチプレイとかで満喫したり、長時間ゲームしすぎて公園に放り出されたりしてほしいのですが、そもそもゲーム機を持ってる小1も少ないしで、時代の流れを感じる次第であります。


育児休業と在宅勤務のハーフ&ハーフ的な何か

もともと、この取り組みは試験的な部分があり、完全に業務をいつも通りに遂行できるとは考えていませんでした。しかし休暇ではないので、できるだけ通常通りの成果を出そうという意志で始めたのは間違いありません。

ですが、それは無理だと早々に判断し、変に自分に気合を入れ過ぎたり、子どもを抑えつけてまで作業をし続けるということはほぼしませんでした。自由研究で長時間必要な場合などは、子どものモチベーションを切らないためにもそちらを優先しました。その代わり、要所では短い区切りまで超集中したり、教育的な意味で何時何分までは頑張るからあまり話しかけないでね、という程度は実行しました。

会社にいると、どうしても始業から終業時間までという意識が強く働きますが、自宅だとその意識は結構薄れます。それは、ある意味危ない意識ですが、その変化は必然でもあるため、仕事のやり方を、時間単位ではなく作業内容単位に意識を切り替えていきました。ドキュメントなら何章まで読む、検証項目は何個まで終わらせる、チャットで依頼がきたら先に済ませる、定時前に区切れたら早くてもその日は終わり!といった具合です。


ただの在宅勤務なら、これではとても従来の成果を出せているとは言い難いです。そのため、長期的に取り組む内容ではないと思いますし、やりたいとも思いません。

その上で、達成した目的と、失った仕事効率などを総合的に踏まえると、育児休業のように子どものために休みつつ、可能な限り在宅勤務をする、という中間的な内容になっており、良く言えば会社の方針である柔軟な働き方であるのではないか、と感じました。

ただ、それが年中続くならば、それに見合った給与評価にならざるを得ないと思います。しかし今回の場合、私自身の夏休み/冬休みがあることも考慮すると、1年365日のうち実質平日30日程度が対象であり、労働人生40年のうちの一部と考えれば、給与評価に影響するまでには至らない程度の1つの制度として扱えなくもないモノと言えそうです。


経験してみよう在宅勤務

今回在宅勤務を経験して思ったのが、誰しもが一度は在宅勤務を経験してみたら良いのではないか、ということです。

そうすることで、まず在宅勤務に適性があるかどうか、ということがわかります。人前で時間を守れなければ独りで守れるはずはないとか、周囲に全く人がいない方がパフォーマンスが良くなるとか、想像できることはありますが、実際にやってみないと、本当に得られるものと、できなくなることがわからないと思います。本当なら、ある程度の信頼と能力把握を周囲にしてもらってから、が良いでしょうが、それを少々先走ってもやる価値がありそうです。

私の場合、意外だった感覚が、会社で同僚と働けるありがたみ、というクサいヤツです。年がら年中、同じ場所に出勤して似たような作業をしていると無縁な感覚ですが、長く離れてみると日常へのクサい感謝を感じたりするもので、それはウチのチームが仲良しファミリーなことも大きいでしょう。クッサー。

……また、今回の件は私のワガママに近い理由での施策でしたが、本来は出産前後のような重大イベントに適用すべきだと思いました。出産前後の妻を一人きりにするのは確実によくないコトなのですが、初産だと夫から見てどうしてあげるべきなのか、妻から見てどうしてもらいたいのか、ってことすらよくわからないんですよね。そこに、経験者の上司あたりが、出産予定日の前1ヶ月と出産後2ヶ月くらいは、ベストエフォート在宅勤務してこいって促すくらいが、今の時代にちょうどよく、平和な家庭を増やせる気がしています。

その前準備的なものとして、事前に在宅勤務を経験しておくというのは、いざ必要になった時に慌てて制度を整えたり、作業環境を整えたりということがなくなるので、会社側としても従業員側としても平和と穏便な関係を保てることでしょう。



仕事のみか育児のみかの完全二択ではなく、かといって身体に無理を強いる完全両立でもなく、今回のような無理しない程度の両立を目指す機会が増えれば良いのかな、と思います。健全な家庭を構築しやすくなるだけではなく、業務から長く離れることによる能力低下を防いだり、従業員の定着を促したりと、色々メリットがありそうです。

現実的には、やはり従業員側としては一定以上の信頼を得る必要がありますし、理解ある経営層、そして能力把握や業務調整を滞りなくできるマネージャーあたりが揃わないと厳しいでしょう。

そんな人材と文化がわりと整っていて、実際に私は在籍15年目くらいなので、就職先を探している方がいましたら、是非とも一度ドリコムを覗いてみてはいかがでしょうか。(点数稼ぎ終わり)